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No.8 教職センター長 田中暁龍先生(専門:日本史、歴史教育、教師教育)
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日本の歴史を他国とどのように
認識の共有を図るか

2014年度~2016年度/研究課題番号:2528249

2013~2015年度 基盤研究(B)/研究課題番号:2528249
「自国史を越えた歴史認識の共有をめざす日韓共通歴史教材の基礎的研究」
2016~2019年度(予定) 基盤研究(B)/研究課題番号:16H03801
「自国史を越えた歴史認識の共有をめざす日韓共通歴史教材の発展的研究」

[2017年5月31日掲載]
研究のきっかけは、1997~2005年に東京学芸大学・ソウル市立大学間で開催したシンポジウムへの参加と、『日韓交流の歴史』(明石書店)発刊に関わったことだ。その後2012年、日韓共通歴史教材の新たな開発に向けて活動を開始、2013年に科学研究費補助金を獲得、韓国の研究者・高校教員との共同研究をスタートした。現在、日韓国際シンポジウムを開催し、日韓共通歴史教材の開発を進めている。

2016年8月、第6回日韓国際シンポジウム
(韓国・韓国学中央研究院 会議室にて)

隣国との歴史認識の共有の難しさと向き合う

近世はいつのこと?

日本が「近世」を16世紀後半~19世紀半ばとするのに対して、韓国では14世紀末~19世紀末を「近世」ととらえるという違いがある。このように日本と韓国では時代区分に違いがあり、「近世」という語を共通教材に用いることは難しい。

倭寇(わこう)は誰?

朝鮮半島や中国大陸沿岸を襲った海賊「倭寇」は、日本史教科書では、14世紀に活動した前期倭寇と、16世紀に中国人を中心に朝鮮・日本人も加わった後期倭寇とを区別して記述する。しかし、韓国の歴史教科書では、後期倭寇の存在を認めず日本人の海賊に限定しているので、歴史認識の共有が難しい。

日本の歴史を見つめ直し相対化する

歴史教科書

評価が違う?

これは、両方とも伊藤博文殺害事件について述べた箇所だが、細かく見てみると、主語の違いの他、さまざまな違いに気づく。日本では、伊藤博文の功績(初代首相、明治憲法の制定など)を踏まえ、その伊藤を暗殺(射殺)した人物として安重根を位置づける。一方、韓国では、侵略者の伊藤を射殺し祖国を救った人物として安重根を位置づける。こうした違いを乗り越えていく必要がある。

そこで、事件の単純な記述で終わるのでなく、資料を提示して次の問いを設ける教材を作成する。

  • 「伊藤や安は、それぞれどのような生き方をしてきたのか」
  • 「安はなぜ伊藤を殺害したのだろうか」
  • 「伊藤の韓国に対する考えはどのようなもので、安を含めた韓国の人々は何を求めていたか」

このように、他国の人々の見方から学び、他国の人々との対話を通して考えることで、日本の歴史を再度見つめ直すことができる。

共通の歴史教材を作成し日韓で協議する

このような難しさを乗り越え、共通の歴史教材を作成し、その教材を高校生が学ぶことは次のような意義がある。今後も、高校生の皆さんの学びを深める教材を韓国の先生方と協議していく。

日本と韓国の歴史の多様性に気づきさまざまな問題解決のヒントを得る。

日本と韓国の地域的特色に触れ歴史を身近なものとする。

主題を設定して資料を活用することで歴史的思考力を養う。

体育祭の全員リレーで全力疾走

田中暁龍先生プロフィール

小学校教員を振り出しに、高校教員(日本史)、中等教育学校教員(中学生を担任)を経て大学教員に至る。小中高大全ての学校に勤務。高校・中等教育学校の教員であった時は、男女バレーボール部の顧問を務めた。また、伊豆七島の一つ、神津島にある都立高校にも3年間赴任した。
2008年から桜美林大学に勤務し、2017年4月から教職センター長に就任。