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OPAP vol.59 『女殺油地獄』
~PFCに現れた非日常空間~

[2015年3月13日掲載]
「桜美林大学パフォーミングアーツプログラム」=OPAP(オパップ)と呼ばれる、桜美林大学芸術文化学群が主体となって制作する公演がある。プロの演出家・振付師がプロデュースし、学生がキャスト・スタッフを務めるが、そのキャスト・スタッフはオーディションによって選ばれるため、公演によって異なり、さまざまだ。一般観客の鑑賞にも堪えるようなレベルの高い公演が、年に数回行われている。
今回の公演期間は、1月24日~2月1日の9日間にわたり、全12ステージで構成された。59作目となる『女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)』は、近松門左衛門の人形浄瑠璃が原作で、桜美林大学芸術文化学群の鐘下辰男先生が、脚本・構成・演出を行った。
原作では、遊び人であった与兵衛が借金をつくって返済に困り、油屋の女房・お吉を殺して店のお金を奪う。その後、与兵衛がお吉を殺したという証拠が見つかり、悪事が露見した与兵衛は召し捕られる…というストーリーだ。しかし今作品では、与兵衛がお吉を殺すシーンで幕が下りる。セリフは現代風になっており、小道具にはスマートフォンが出てくるなど、江戸時代の人形浄瑠璃が原作とは思えないほどアレンジされていた。

本作品では、14人のキャストが選ばれた。キャストのオーディション方法は、作品・演出によって変わる。今回は、オーディションが1次と2次に分かれ、105人の応募があった。1次オーディションは、マット運動、台本に書かれたセリフを読むこと、先生が指定したテーマについて10分間考え、3分間でスピーチをするというもの。2次オーディションに残ったのは25人。ここでは実際に体を動かしたり、歌唱力を審査したり集団創作するオーディションが行われた。この時点で鐘下先生は、「この学生はこの役」と一つの役に対して2~3人目星をつけていたそうだ。オーディションの結果、今回は4年生3人、3年生6人、2年生3人、1年生2人が選ばれた。

準備・稽古期間は、一つの作品に半年以上掛かる。稽古は、桜美林大学町田キャンパスと実際に公演が行われるプラネット淵野辺キャンパス(PFC)で行われた。稽古では鐘下先生が直接指導に当たり、町田キャンパスでは台本の読み合せや立ち稽古などを、PFCでは本番さながらの演技が行われた。
「鐘下先生の稽古方法は独特」と、公演に関わった全ての学生が答える。その稽古方法は『原始人稽古』と言われ、台詞から役の「行動」を抜き出し、それをベースとして台本解釈をするものである。また、「気づいたら、体が勝手に動いていた」という状態になるよう、舞台では本物の包丁が小道具として使用され、本物だからこその重みや切れるという事実を感じながら演じることを大切にしているそうだ。

上演開始は暗転の中「ドォーン」という迫力のある音で始まり、音楽と共に出演者が現れて踊りだした。独特の雰囲気が一瞬にして会場全体を包み、目の前で繰り広げられる演技に観客の注目が集まった。次々と切り替わるシーンごとに大道具や小道具の転換が行われる。素早く転換されるので、観客の集中を途切れさせない。劇中には殺陣(たて)のシーンが多くあり、体を張った演技に舞台の緊張感が増し、観客は引き込まれていった。登場人物の心情も巧みに表現されており、実際にいる人物だと錯覚させるほどの演技。2時間の上演時間はあっという間に感じ、演技と演出にただただ圧倒される。学生が演じているとは思えないほどの仕上がりで、迫力の中に悲しさを感じる作品だった。 学生記者:長谷川幹弥、中島菜緒

主人公“与兵衛”を演じた下島礼紗さん
(総合文化学群演劇専修4年)にインタビュー

※総合文化学群は、2013年度より芸術文化学群へ名称変更しました。

Q:殴る蹴るなどのアクションは痛くありませんか?
A:実際に殴られている(蹴られている)ように見えますが、かわし方を殺陣師(たてし)の渥美博さんが指導してくださったので、大丈夫です。ただ、ビンタだけは実際に叩かれるので痛いです。
Q:一番難しかったこと、辛かったことは?
A:映像ではなく演劇なので撮り直しがきかないことです。例えばハプニングが起きたとき、瞬時の対応が必要。スマートフォンを使った演技の場面で、手が濡れていたので操作が効かず必要な音声が出てこなかったときは焦りました。撮り直しがきかないというのは、楽しさでもあり厳しさでもあると思います。
Q:演劇OPAPにチャレンジしようと思った理由は何ですか?
A:ダンスで入学しましたが、鐘下先生の『上演実技』という必修科目を履修したことで演劇に興味が湧きました。鐘下先生のOPAP出演は2回目です。まさか、自分が演劇をやるとは思ってもみませんでした。いろいろなことにチャレンジできるのが、桜美林大学の良いところですね。